自分と和解したい。

日々感じたことを言葉にする練習です。

「ことりの肖像」読書感想文。(RT解禁)

かかり真魚さん「ことりの肖像」の読書感想文です。ガチなネタバレはないと思うけど、内容にちょっと踏み込んだ部分はあるので、注意してください。

真魚さんの書く言葉が好きで、真魚さんの書かれたものをたくさん持っているけど、ちゃんと分かるものってあまりなくて(ていうか真魚さんに限らず、わりと「このひとの言葉が好き、でも正直作品は難しくてあまり分からない、でも好き」みたいな現象は多々起こる。ニーチェキルケゴールもそんなに分かるわけじゃないのに言葉が好きで文庫本集めてしまう)。でも、おそまつさんの二次創作は、分かるんですよ。分かる。自分でも正直「は???」って感じで…なぜ真魚さんの言葉がわかる…?だってわたしおそまつさんアニメで二話まで見たくらいで、ほぼ原作知らないのに!しかも真魚さんの最初に読んだやつ短歌本だったんですよ…わたしそれまで短歌なんて読んで分かったことほぼなかったんですよ…。今回、小説本読んで、それもすごくスッと入ってくるので、ほんとうに衝撃でした。おそまつさんって一体なんなんだ。

まず、序盤から中盤。一松が直面するありとあらゆる描写がひとつひとつグサグサ刺さる。音楽の魂の話。国語便覧の話。一松がもう一松ってそんなんだったの!?という衝撃。つい、デフォルメされたキャラクターのように見ていたけど、ちがう。すごく生々しくてすごく人間でくるしい。アニメ二話しか見てないので六子の違いが正直分からなかったんだけど、これすっっごく分かりやすくて辛い。え、全然違うじゃん。別人じゃん。こんなに溝があったのか。六子なのに。

こんな感想は低俗かもしれないのですが、変に真面目で周囲に溶け込めない部分はわたしの中にもあるので…、そしてまさかおそまつさんの中に自分のそんな部分を見つけるとは思わなかったので…、中盤までずっと一松のことしか見えなくて、一松と同じ視点でずっと心臓を揺さぶられてた。だから、後半の告発はつらかった。なんで十四松がしゃべれなくなったのかなんて、考えなかった。そういう自分勝手な弱さに、気付かなかった。ほんとうに。

あなたは真面目だから大丈夫。という言葉の裏に隠された、あなたはわたしたちとは違う、という線引き。真面目なんじゃなくて、何も無かっただけなんだ、と気付く時の喪失感。愛されたいと願って初めて、愛されるだけの素質を何も持っていなかったと知る。そのときの、言葉にできない寂しさ。

ふと気付く違和感、何かが違うのに、みんなには伝わらない。最終的に、具合が悪いの?なんて言われてしまう。もちろん言ってる方には何の非もない。どちらかというと優しさの部類だ。でもそれは、自分だけが違うのだ、という孤独をよりくっきりとさせる。これ以上は、何かを言えば言うほど、孤独になるだけだ、と。

好きなものはたくさんあるのに、それをコミュニケーションの中の言葉に変換できない。わたしはたぶんずっとそうで、だからずっと寂しい。ドストエフスキーとか、めちゃくちゃ好きなんだけど、どこがどう好きとかそういうのうまく言えない。音楽の魂の話がほんとうにそうだった。好きなものは、こころの弱いところをぎゅっとするものだから、簡単に触れられたら痛い。知らないと言われたら傷付くし、どうして?と言われたら言葉が続かない。大切だから、手放したくなくて、キャッチボールが出来ない。距離の詰め方が分からない。ひとりの方が楽だし、と思う、思うようにする、その方が寂しくないから。実際に、それで傷付く頻度も減る。どうして?と聞かれることもないので、困ることもなくなる。でも、ふとした瞬間に、寂しさが浮き上がってくる。

みんなが誰かと楽しそうに話していて、自分もたくさん話せる友だちが欲しかったんだ。でも、傷付くのが嫌でひとりを選んでいるのは自分なんだ。それでぐるぐるいろんな気持ちになる、そんなことをもう何年もやっている。大人になっても。なんなんだよ、と簡単に笑い飛ばせたら。そうできない真面目さが、なんか、合わさってしまって、、、!

十四松がそうなったのは一松にいさんのせいだ、という告発、それを今までどうして一度も考えたことがなかったのか、という非難。ほんとうに自分が直接言われたみたいにショックだった。それをほんとうに 考えたことがなかった という 言葉にならない事実。優しさは変わって無くなってしまったと思っていた、それはほんとうに自分勝手な解釈だった、十四松はずっと優しかった、のに…!

そこからのラストへの疾走感が、もうほんとうにほんとうに好きです。157pと158pの十四松の言葉をそのまま全部引用したいくらいです。「他の人はぼくらじゃないから、ぴかぴか光ってるのを一緒に見れないし、あんまり良く分かんないんだね。でもぼく、ときどきそれでも良いと思う。全部わかってもらえなくても、きみがたまにぼくのことをわかってくれるのが、しあわせ。(だから、)/あんまりとおくに行かないでね!」。うー、ちがうこれここだけ抜粋しても全然分からないと思うのですが、ずーっと一松視点で読んでいてこれだと、ほんとうに泣くよ!!!泣くよ……。

文フリの帰りの新幹線から、ご飯も食べないでぶっ通しで読んでしまった。降りる駅を逃さなかったことを褒めたい(あぶなかった)。

いい大人なんだし、こんなやつに感情移入してどうすんだよ。とは思い、それを笑い飛ばせない真面目さもある。けど、たまに言葉が分かるよね。なかなか友だちができなくて、ほんとはずっと寂しくて、でも分かる言葉があったよね、と思う。きらきらしたのがあったよね。それだけでここまで来たんだ。そういう生き方でも良いんだよって、小鳥の声をレンタルしてまで伝えようとしてくれる、十四松の優しさが心に染み渡るようでした。ほんとうにほんとうに大好きです。

とりとめなくてすみません。おそまつさん、原作みます、ちゃんと。そしてアニメ二期、もっとわくわくさせてくれるといいな。

素晴らしい作品を書いてくれて、ほんとうにありがとうございました。